「高校教師が見た『企業のヘタクソ会議の地獄』——そこからFigmaで脱出した方法」

当たり前ですけど、会議って重要ですよね。
私は高校教師から一般企業に移ったという珍しいタイプの人間なのだが、勝手なイメージで一般企業の会議はすごくイケていると思っていた。
思っていたのだった。全然違った。むしろ学校の会議の方がまともだったとさえ思う。

テキトーに出されるアジェンダ。いつも会議の1時間前。
決まらないネクストアクション。何を話しているのかさっぱりわからない1時間。
いや。話についていこうとしましたよ!当然!だから、議事録係に立候補してきっちり運営しようとした。だけどね。手が止まるんですわ。そもそも話がズレていくから。

そんなやばいミーティングが2年半も続きました。

その状況を変えたのは、私とのマネージャー交代による「会議を正常に戻す」という一つの決断だった。

目次

1. 2年半の混乱——アジェンダもなし、まとめ役もなし、可視化もなし

ミーティングが機能しない構造は、実は単純だった。

  • アジェンダの欠落
    会議の目的と進行順序が、参加者に共有されていない。良い場合は当日に紙で配られ、悪い場合は口頭で説明されるだけだ。参加者は「今、何をしているのか」という文脈を持たないまま話を聞く。
  • まとめ役の不在
    議論が進むにつれ、複数の論点が同時進行する。それらを整理し「ここまでで決まったこと」「まだ決まっていないこと」を示す者がいない。話は拡散し、同じ話が何度も繰り返される。
  • 情報の散乱
    チーム用の分析データは、Googleドライブの特定フォルダに管理されている。だが、ミーティング中に「あのデータはどこだったか」と探す羽目になる。そのたびに、議論が中断される。
  • 可視化の欠如
    ホワイトボードも、スクリーン上の図も、参加者が共有する「目に見える構造」がない。全てが口頭での説明に依存する。聴者は、自分の理解が正しいのか、他者とズレていないのかを確認できない。

この四つの欠落が重なると、ミーティングは機能を失う。参加者は疲弊し、「結局、何も決まらなかった」という虚無感を持ち帰ることになる。

それが2年半も続いていた。がっかりだ。私は何度か声をあげたよ。会議を変えましょうと。ダメでしたね。笑
あと、この会社にずっといるつもりなかったのでどうでもいいと思っていたのもあるけれど。

2. 転機——マネージャー交代と「正常化」への決定

私と交代した。

新しい体制では、ミーティングを「正常に戻す」ことが優先事項となった。つまり、先述した四つの欠落を埋めることである。

アジェンダを事前に示す、進行役を明確にする、情報を一元化する、そして何より「議論の構造を可視化する」。これらは、ツール以前の「会議運営の基本」である。

だが、この基本を実装するためには、適切なツール選択が必要だった。

3. 最初の試み——マインドマップとの付き合い方

教員時代から使っていたマインドマップを候補に挙げた。思考を構造化するのにとても有効だからだ。授業案や指導案、会議にも使っていたので慣れていた。
しかし、最近のmindmiesterがアホみたいに使いにくい。有料版なのに。

個人の思考整理であれば、中心概念から枝分かれして、段階的に詳細化していくプロセスは機能する。だが、現在のチームミーティングで使用すると、別の課題が生じた。

複雑な戦略検討では、思考が「階層」という単一の構造に収まらない。同時に4つの視点から分析する場面、複数の要素が相互に影響する構造、あるいは複数の提案を並列で検討する場面——こうしたものは、樹形図では表現しきれない。

また、ミーティング中に「全体像を失わない」という要件も、マインドマップでは満たしきれなかった。情報が増えるたびにズームイン・ズームアウトを余儀なくされ、参加者の間で「今、何を見ているのか」という認識がズレやすくなるのだ。

マインドマップは個人の思考用には優秀だが、チームの動的な議論を支えるには、別のアプローチが必要だった。

4. Figmaへの転換——コンサル時代の経験を活かした選択

Web3コンサル時代、複雑な概念設計の中で、Figmaが活用されていた。

その時の経験から、Figmaには一つの特性があることを知っていた。複数の視点、複数の情報形式、複数の論点を、単一のcanvas上に配置できるということだ。そして、ページ遷移がない。

ミーティングの正常化に向けて、この特性は有用だと考えられた。

Figmaを導入することで、アジェンダ、データ、議論、意見の全てを「1枚のcanvas」に収めることができる。参加者は、その1枚を見ることで、「今、何をしているのか」「これまで何が出ていたのか」を常に把握できる。

5. 実装の効果——「1枚に収まる」ことの力

導入後、ミーティングの質に変化が生じた。

1回の会議で議論する内容が、1枚のcanvasに収まるようになった。

これは単なる情報整理ではない。参加者が「全体像を見失わない」という状態を実現する。Googleドライブを探す必要もなく、スクリーン上に全ての関連情報が存在する。議論の過程で、「あれはどこだったか」という脱線が消える。

参加者の意見が、全てその1枚に集約される。

複数の視点、複数の提案が、同じcanvas上に可視化される。これにより、意見の「対立」ではなく「相違」が明確になる。「なぜ、こういう意見が出たのか」という背景も、配置や色分けによって表現できる。

結果として、参加者は「迷わない」。

「今、何の話をしているのか」という問いが、ミーティング中に生じなくなる。なぜなら、その答えが常にcanvas上に存在するからだ。

さらに、4象限分析やブレストのような複雑な思考プロセスでも、Figmaは対応できる。単なる樹形図ではなく、空間的な配置によって、意外な関連性や対立構造が浮かび上がる。

6. 変化の本質——可視化がもたらす参加者の意識

Figmaへの移行により、ミーティング自体の質が向上したのは、ツールの機能だけによるものではない。

可視化が、参加者の意識を変える。

従来、口頭での議論では、各自が「自分の理解」に基づいて発言していた。その理解が他者と一致しているかどうかは、確認されないままだった。

しかし、議論がcanvas上に展開されると、その可視化が「自分たちは同じものを見ているのか」という問いを強制する。ズレを発見しやすくなるのだ。

加えて、ミーティングのまとめ役が機能するようになった。

進行役は、参加者の発言をリアルタイムでcanvas上に配置し、構造化する。その過程で、「この意見とこの意見は、実は同じことを言っている」「この提案は、別の論点と矛盾している」といった気づきが生じる。ミーティング中に、議論の質を高めるフィードバックが可能になるのだ。

まとめ:会議を正常化とは「思考の構造化」を組織的に実装すること

2年半のミーティング混乱から脱出するプロセスは、実は単純だった。

アジェンダを示す、進行役を置く、情報を一元化する、議論を可視化する。これら基本的な要素を、組織的に実装すること。

その実装を支えるのが、ツール選択である。Figmaは、この四つの要素を全て満たす現在地における最適な選択肢として機能した。

だが重要なのは、ツールそのものではない。「会議を正常化する」という意図が、ツール選択とそのミーティング運営に一貫して反映されているかどうかという点である。

複雑な思考を扱うチームほど、その思考を「構造化し、可視化する」という営みが不可欠になる。Figmaは、その営みを実装する現在地における有効な選択肢に過ぎない。

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