仮想通貨に興味を持った人なら、一度は「USDT」という名前を目にしたことがあるのではないでしょうか。
ビットコインやイーサリアムのように価格が大きく動くコインと違い、USDTは1ドル=1USDTを目指して安定する「ステーブルコイン」です。本記事ではステーブルコインとUSDTについて次の内容で解説します。
- USDTとは何か?
- どんな仕組みで安定しているのか?
- 誰が発行しているのか?
- どうして市場シェアNo.1なのか?
次回以降は「国内取引所でのUSDT運用」へ進みますので、最初のステップとしてぜひ理解しておきましょう。
それではまず初めに、ステーブルコインとは何なのかについて知っておきましょう。
ステーブルコインとは?
「ステーブルコイン」とは、その名の通り 価格を安定(Stable)させた暗号資産 のことです。
通常の仮想通貨(ビットコインやイーサリアムなど)は値動きが激しく、資産が大きく増える可能性もある一方で、急落してしまうリスクも高いという特徴があります。
そこで、米ドルなどの法定通貨と価値を連動させることで 「1枚 = 1ドル」など、安定した価値を保つよう設計された通貨 がステーブルコインです。
そして今、日本でもJPYCを筆頭に日本円連動型のステーブルコインが盛り上がりを見せています。では、なぜステーブルコインが注目されるのでしょうか。その理由は次の通りです。
- 価格の安定性:ボラティリティが小さく、暗号資産市場のリスク回避手段になる
- 送金の便利さ:海外送金が数分〜数時間、かつ安い手数料で可能
- DeFiや取引の基軸:DEXやCEXで仮想通貨を売買する際、ステーブルコインが基準通貨として使われる
- 新興国での利用:インフレ率の高い国で「ドル代替」として普及
保有しているだけの「投資対象としての暗号資産」だけでなく、「実際に使えるデジタルドル」 としての側面が大きく注目されているのです。使えるというのは、決済、給与支払いなど実生活で使えるという意味です。
主要なステーブルコインとその違い
日本国内で、買い物をドルで支払うなんて言う未来が待っているかもしれません。そんなステーブルコインですが、どれぐらいの種類があるのでしょうか。DeFiLlmaのステーブルコインページを見てみると。。。
288種類もある!!🤪
ありすぎですよね。そのほとんどが米国ドルに連動するものばかりです。ステーブルコイン発行合戦が起こっている状況です。これだけある中、現在、代表的なステーブルコインは以下の3つです。
コイン名 | 発行主体 | 仕組み | 特徴 |
---|---|---|---|
USDT(Tether) | Tether社 | 法定通貨担保型 | 世界最大のステーブルコイン。取引所で基軸通貨として利用。 |
USDC(USD Coin) | Circle社 | 法定通貨担保型 | 米企業による発行で透明性が高く、規制当局との関係も強い。 |
DAI | MakerDAO(分散型組織) | 暗号資産担保型 | 中央管理者がいない分散型。イーサリアム担保で安定性を保つ。 |
上記を見ての通り、ステーブルコインには価値が法定通貨と連動するという共通の特徴以外に違いがあります。
- 発行主体 → 民間企業(USDT・USDC)か分散型組織(DAI)か
- 担保の種類 → 法定通貨(ドルや国債)か暗号資産(ETHなど)か
- 信頼性の基準 → USDTは利用規模最大、USDCは透明性重視、DAIは中央集権リスク回避
その中でも「USDT」が最大シェアを持つ理由
数あるステーブルコインの中で、圧倒的にシェアが大きいのがUSDT(テザー)です。
- 時価総額:約1560億ドル(2025年時点) → ステーブルコイン市場の60%近くを占有
- 流動性が高い → ほぼ全ての取引所で利用可能
- 利用範囲が広い → CEX(中央集権型取引所)でもDeFiでも基軸通貨
つまり、ステーブルコインの解説をする上で「USDTを理解すれば、まずは十分」と言えるほど、USDTは市場の中心的存在です。
USDTとは?
USDT(テザー)は、米ドルと同じ価値を持つことを目指した「ステーブルコイン」です。
発行元は Tether社(2014年設立)で、常に 1 USDT ≒ 1 USD(約1ドル) になるように設計されています。
他の仮想通貨と大きく違うのは、価格が安定している点です。
たとえばビットコインは大きく値上がり・値下がりしますが、USDTは基本的に1ドル前後を保ちます。そのため、暗号資産市場の「値動きから一時的に避難する安全資産」や「取引の中継通貨」として利用されます。
発行元の「Tether社」とは?
USDTを発行しているのは Tether Limited社(通称:Tether社) です。
2014年に設立され、現在は香港を拠点にしています。
Tether社は、
- ユーザーや取引所から受け取った 米ドルや国債などを準備資産として保有
- その裏付けに応じて 同額のUSDTを発行
という仕組みを持っています。
例えば、Tether社に1億ドルの資金が預けられると、同額の1億USDTが新規発行されます。逆に、償還(換金)が行われれば、その分のUSDTは消滅します(バーン)。
「法定通貨担保型」とは?
ステーブルコインにはいくつかの種類がありますが、USDTは「法定通貨担保型」です。
これは、現実の資産(米ドルや国債など)が裏付けとして保有されている仕組み です。
- メリット:価格の安定性が高く、利用者が「1USDT = 1USD」と信じやすい
- デメリット:発行元が本当に十分な資産を持っているのか、透明性が課題になる
USDTはこの点で、たびたび「準備資産は本当にあるのか?」と疑問を投げかけられてきました。
テザー社をめぐる訴訟と懸念
Tether社は、過去に米国の規制当局から調査・訴訟を受けた経緯があります。
- 2019年:ニューヨーク州司法当局が「準備資産の一部を他の会社(Bitfinex)の損失補填に流用した」として調査を開始
- 2021年:最終的に 1850万ドルの和解金 を支払い、ニューヨーク州での取引停止を命じられる
- 2021年10月:米商品先物取引委員会(CFTC)からも「準備金の不正確な説明」に対して 4100万ドルの罰金
これらの出来事から、
- Tether社が発表する準備金の透明性に不信感を持つ投資家もいる
- USDCなど他のステーブルコインに「信頼性」で優位性を感じる層も存在する
という状況が生まれました。
それでもUSDTが使われ続ける理由
- 圧倒的な流動性:ほぼ全ての取引所で利用可能
- 送金の利便性:特にTron版USDTは手数料が安く、個人間送金に最適
- 長期的な実績:これまで何度も大量償還に耐え、最終的には常に1ドル前後を維持
👉 つまり、「リスクがあることは知っているが、それでも一番便利」というのが市場の評価です。
まとめ
- ステーブルコインとは、法定通貨と価値を連動させた「安定した暗号資産」
- 注目される理由は「安定・送金・取引の基軸・新興国での利用」
- USDT、USDC、DAIが代表格だが、最大シェアはUSDT
- USDTは流動性と利便性の高さから、初心者が最初に覚えるべきステーブルコイン
👉 次回は、「USDTを実際にどう運用するか(CEXを使った方法)」 を紹介します。
DYOR!!