XRP Ledgerとは
XRP Ledger(XRPL)は、10年以上にわたり稼働している信頼性の高いレイヤー1ブロックチェーンです。国際送金や通貨間の決済、さらにはトークン化など多様な用途に利用されており、高速かつ低コストな取引が大きな強みです。
XRPLのコア機能は次のとおりです。
- トークンやNFTの発行・管理
- 分散型取引所(DEX)
- エスクロー機能
- 自動マーケットメイカー(AMM)や中央集権型板寄せ方式(CLOB)を組み込んだネイティブ流動性機構
- 規制・コンプライアンスを意識した仕組み
これにより、ステーブルコインや合成資産といった市場機能を、外部スマートコントラクトに依存せずネイティブに提供できる点が特徴です。
もっとも、XRPLのベースレイヤーは「任意のスマートコントラクト」をサポートしていません。これはセキュリティと安定性を重視するための設計上の選択です。ただし、2024年9月には「Extensions」と呼ばれる仕組みが発表されました。これは既存のXRPL機能にコードを付加して拡張する方式で、完全なスマートコントラクトを導入する前段階と位置づけられています。また、サイドチェーンによる外部実行環境も活用でき、エコシステム全体の柔軟性を高めています。
XRPLはRipple社だけでなく、XRP Ledger Foundation、XRPL Labs(Xaman)、XRPL Commonsなど複数の開発チームや個人によって支えられています。これにより、個人利用にとどまらず、銀行やフィンテックといった既存金融機関向けのインフラとしても展開が進んでおり、B2B・B2C両面での利用可能性が注目されています。
時価総額の動向

2025年前半、XRPの時価総額は大きな変動を伴いながら推移しました。
- Q1(1〜3月)
年初は約1,300億ドルでスタートし、2月上旬には1,700億ドル近くまで上昇しました。これは市場全体のリスクオン姿勢やXRP関連の好材料が重なった結果です。しかし、その後は調整局面に入り、3月末には1,000億ドル台前半まで下落しました。つまり、Q1は「急騰から急落」へと移行するボラタイルな期間だったといえます。 - Q2(4〜6月)
4月にはさらに下落し、年初来の安値圏(1,100億ドル)まで下がった後、5月にかけて持ち直し、1,500億ドル近辺まで回復しました。しかし、その反発は長続きせず、6月末時点では再び1,200〜1,300億ドルで推移しています。Q2全体を通してみると、下落後の反発と横ばいのレンジ相場が特徴でした。
2025年前半のXRP時価総額は、Q1の「急騰から急落」、そして Q2の「下落後の反発と安定化」 という二段階の展開を見せました。依然としてボラティリティの高い資産であることは変わらないものの、Q2後半には値動きの落ち着きが見られ、次の方向感を模索する局面に入っていると考えられます。
オンチェーンデータから見る利用状況
オンチェーン活動はやや減速しました。
- アクティブアドレス数は前期比で減少し、取引数や取引手数料も低下傾向にあります。
- ユーザーの新規流入が鈍化していることが背景と考えられます。
ただし、基盤技術は安定しており、ガス代(手数料)が安価に保たれているため、今後のエコシステム拡大に向けた余地は十分に残っています。
ステーブルコインとラップド資産
XRP Ledger(XRPL)におけるステーブルコイン市場は、2024年12月にリップル社が米ドル連動型ステーブルコイン「RLUSD」を発行したことで大きく動き始めました。2025年第2四半期の終わりには、RLUSDの時価総額は 合計4億5,520万ドル(XRPLとEthereum合算)に達し、そのうち XRPL上では6,590万ドル(前期比+49.4%) を占め、XRPL内で最大のステーブルコインとなっています。
そのほかの主要なステーブルコイン・ラップド資産の状況は以下のとおりです(2025年Q2末時点):
- Gatehub Fifth(ETH):870万ドル(+27.9% QoQ)
- Ripple Fox CNY:560万ドル(-5.1% QoQ)
- USDC:380万ドル(6月12日ローンチ)
- Gatehub USD:370万ドル(-9.7% QoQ)
- Bitstamp USD:280万ドル(-28.2% QoQ)
ただし、XRPL全体のステーブルコイン規模はまだ他の大手チェーンと比べて小規模です。たとえば、2025年Q2末の時価総額は Ethereum 1,312億ドル、TRON 789億ドル、Solana 96億ドル と大きく、XRPLの普及はまだ始まったばかりといえます。
一方で、Q2はXRPLにとって歴史的な四半期でもありました。
- USDC(Circle社):2025年6月にXRPL上で正式ローンチ
- XSGD(StraitsX):シンガポール・ドル連動ステーブルコインを発行
- EURØP(Schuman Financial):MiCA規制に準拠した初のユーロ建てステーブルコインをXRPLで発行
- USDB / BBRL(Braza Group):米ドル・ブラジルレアル連動の新トークンを展開予定
これらの発行体はいずれも、XRPLの「組み込み型コンプライアンス機能」に注目しています。特に「Clawback(発行体による資産回収機能)」は、規制対応において重要で、金融機関が規制当局の命令に従って資金を回収できる仕組みを備えています。2025年1月には、ClawbackがAMM(自動マーケットメイカー)にも対応し、流動性プール内でも利用できるようになりました。
さらに、インフラ面でも進展がありました。
- Axelar:XRPLを統合し、EthereumやCosmosを含む60以上のネットワークと接続
- Wormhole:XRPLとXRPL EVM Sidechainをサポートし、35以上のチェーンとのクロスチェーン連携を可能に
これにより、XRPL上のステーブルコインや資産は他の主要ネットワークとも接続され、より広い流動性とユースケースを獲得しつつあります。
Wrapped Assetsとは?
XRPL上では、ステーブルコインと並んで「Wrapped Assets(ラップド資産)」の存在も重要です。
Wrapped Assetとは、他のブロックチェーン上の資産をXRPL上で利用できるようにしたトークン のことです。例えば「Wrapped Bitcoin(WBTC)」は、実際のビットコインを担保に発行され、EthereumやXRPL上で流通します。これにより、ビットコインの価値を持ちながら、異なるネットワークの機能(AMMやDEXでの取引など)を活用できるのです。
XRPLでは「Bitstamp BTC」や「Gatehub Fifth(ETH)」などのラップド資産がすでに流通しており、これらはXRPLの分散型取引所(DEX)や流動性プールで利用可能です。今後、AxelarやWormholeといったクロスチェーンプロジェクトの統合により、さらに多くの資産がXRPLに接続され、他チェーンからの流動性を呼び込むと見られています。
今後の展望
2025年に入り、XRP Ledger(XRPL)はエコシステムの拡大と多様化に明確なシフトを見せています。特に注目すべきは以下の3つの方向性です。
1. サイドチェーンによる拡張性の獲得
XRPL本体は依然としてシンプルな設計を維持しつつ、サイドチェーンを通じた機能拡張が進んでいます。
- XRPL EVM Sidechain(2025年6月稼働):Cosmos SDKをベースに構築され、EVM互換機能を提供。AxelarやWormholeとの連携により、35以上のチェーンとのクロスチェーン取引が可能に。
- Coreum:Sologenicチームが構築したエンタープライズ向けL1。証券トークン化やRWA(現実資産)の取り扱いに注力し、IBC統合でEthereumやBNB Chainとも接続。
- The Root Network:NFTやメタバースに特化したサイドチェーン。XRPをガス代に採用し、Futureverse主導で拡張中。
これにより、XRPLは従来の「高速・低コストな決済台帳」にとどまらず、DeFi・NFT・RWA・メタバース領域へと進出しています。
2. ガバナンスと規制対応の進化
XRPLはオンチェーン投票ではなく、バリデーターによるオフチェーン合意でネットワークアップグレードを進めています。
2025年には以下のような改正が承認されました:
- AMM Clawback(1月):発行者による資産の回収機能
- Deep Freeze(5月):指定アカウントの送受信を禁止できる強力な凍結機能
- DynamicNFT(6月):進化型NFTの発行を可能に
- Decentralized Identity(2024年10月):分散型ID(DID)によるKYC/AML対応
さらに「Credential」「Permissioned Domains」「Permissioned DEX」など、規制準拠を前提とした提案も進行中であり、金融機関による利用を意識した発展が目立ちます。
3. コミュニティと開発者支援
Rippleは2022年に1B XRP(10億XRP)のエコシステム支援を約束しており、2025年も積極的な資金投入が続いています。
- XRPL Grants / Accelerator:最大20万ドルの助成金、アジア・欧州の開発者を対象に展開
- Hackathon & Apexサミット:シンガポールで過去最大規模のハッカソンを開催
- 地域ファンド(日本・韓国・ブラジル・AI分野):各国・分野ごとの重点投資
開発者が参加しやすい環境を整えることで、新規アプリやユースケースがXRPL上に次々と登場する土壌が整えられています。
まとめ
XRP Ledgerは長らく「送金特化チェーン」という印象が強い存在でした。しかし2025年現在、その役割は確実に広がっています。
- サイドチェーンによる多用途化(DeFi・NFT・RWA・メタバース)
- ガバナンスとDIDによる規制適合性の強化
- 開発者支援と地域ファンドによるグローバルなエコシステム拡大
これらの進展は、単に価格上昇の材料にとどまらず、実需と採用の拡大につながる可能性があります。XRPの経済的基盤は依然として強固であり、今後は「決済インフラ」から「マルチユースの金融・アプリ基盤」へと進化していくことが期待されます。