イントロダクション
2025年上半期のEthereumは、5月7日に実施された大型アップデート「Pectra」を契機に、その存在感を大きく変化させた6か月間となった。Pectraは2022年のMerge以来の最も重要なアップグレードとして位置づけられ、ステーキング体験の改善からユーザビリティの向上まで、幅広い領域でEthereumエコシステムの基盤を強化した。
このアップデートを境に、Ethereumは単なるスマートコントラクトプラットフォームから、より洗練された分散型金融インフラへと進化を遂げている。本レポートでは、Pectraアップデートが与えた技術的変革を中心に、DeFi、NFT、ステーキング各分野での実績を分析し、2025年後半に向けた展望を考察する。
技術アップデートとネットワーク動向
Pectraアップデート(2025年5月):新時代の幕開け
5月7日に実施されたPectraアップデートは、Prague実行層ハードフォークとElectra合意層アップグレードを組み合わせた統合アップデートとして、Ethereumの技術基盤に根本的な改革をもたらした。11の主要なEIP(Ethereum Improvement Proposal)を含むこのアップグレードは、特に以下の領域で顕著な改善を実現した。
最も注目された変更の一つは、ステーキング機能の大幅な拡張である。従来32ETHに制限されていたバリデーター1基あたりの最大ステーキング量が、2,048ETHまで引き上げられた。この変更により、大口ステーカーの運用効率が劇的に向上し、ネットワーク全体のバリデーター管理コストの削減が実現された。
さらに重要なのは、アカウント抽象化に関する進展である。EIP-7702の導入により、既存のEOA(Externally Owned Account)をスマートアカウントとして機能させることが可能となり、ユーザー体験の抜本的な改善が図られた。
具体的には、ユーザーは以下のような従来不可能だった機能を利用できるようになった。ガススポンサーシップ機能により、dAppやウォレットプロバイダーがユーザーに代わってガス代を負担することが可能になり、新規ユーザーの参入障壁が大幅に低下した。また、ApproveとSwapを単一のトランザクションに統合できるバッチ処理機能により、従来のような複数回の確認プロセスが不要になった。
さらに画期的なのは、セッションキーやデリゲーション機能の実現である。ユーザーは特定の操作に対して事前承認を与えることで、ゲームやトレーディングなどの連続的な操作が必要なアプリケーションにおいて、毎回の署名確認なしにスムーズな体験を得られるようになった。ソーシャル・リカバリー機能により、複数のデバイスや信頼できる連絡先を通じた柔軟なアカウント復旧も可能になり、従来のシードフレーズ依存から脱却できるセキュリティモデルが実現された。
ネットワーク利用状況の変化

Pectraアップデート以降、Ethereumネットワークの利用パターンに明確な変化が観測されている。特にL2(レイヤー2)ソリューションとの連携強化により、メインネット上でのトランザクション処理効率が向上し、平均ガス代の安定化が実現された。

L2エコシステムの拡大も顕著で、Arbitrum、Optimism、Polygonといった主要なRollupソリューションにおけるトランザクション量は、Pectraアップデート後に大幅な増加を記録している。これは、アップデートによって実現されたデータ可用性の改善とコスト効率化が、L2上でのdApp開発とユーザー採用を促進した結果と考えられる。
エコシステムの現状
DeFiセクター:史上最高レベルのTVL達成

https://defillama.com/chain/ethereum
2025年上半期のDeFi市場は、驚異的な成長軌道を描いた。DeFiセクター全体のTVL(Total Value Locked)は3年ぶりの高水準である153億ドルを突破し、さらに7月には270億ドルに到達するなど、市場の拡大ペースが加速している。
Ethereumは引き続きDeFi市場の約60%のシェアを維持しており、プラットフォームとしての優位性を確固たるものにしている。主要プロトコルでは、Uniswap、Compound、Aaveなどの老舗プラットフォームが安定的な成長を維持する一方、新しいイールドファーミング戦略やクロスチェーン機能を提供するプロトコルが急速に台頭している。
NFT市場の成熟と新展開
NFT市場においては、投機的な取引から実用性を重視した活用へのシフトが鮮明になった。アート系NFTの取引量は前年同期比で減少傾向にある一方、ゲーム内アセット、音楽著作権、不動産関連のNFTなど、実用性の高い分野での取引が着実に増加している。
Pectraアップデートによるアカウント抽象化の恩恵は、NFT分野でも顕著に現れており、従来複雑だったNFTの売買や管理プロセスが大幅に簡素化されている。特に、バッチ処理機能により複数のNFTを一度に取引することが可能となり、コレクター向けの利便性が向上した。
ステーキングエコシステムの進化
Ethereumのステーキング環境は、Pectraアップデート後に根本的な変革を遂げた。最も重要な変化は、バリデーター当たりのステーキング上限引き上げによる運用効率の向上である。これにより、大手ステーキングプロバイダーは運用コストを大幅に削減し、より競争力のあるリワード条件を提供できるようになった。
また、出金プロセスの改善により、ステーカーの資金管理がより柔軟になった点も重要である。従来はオペレーターに依存していた出金プロセスが、ステーカー自身で完結できるようになり、カウンターパーティリスクの軽減が実現された。
ここで、ETHのステーキング比率を見てみよう。

現在のEthereumステーキング比率は、ネットワーク全体の供給量に対して安定的な水準を維持しており、バリデーターの参加インセンティブとネットワークセキュリティのバランスが適切に保たれている状況が続いている。
ETHのトークノミクスと市場データ
供給量動向とバーン機能の効果
EIP-1559によるETHバーン機能は、2025年上半期においても継続的にETHの供給量抑制に貢献している。ネットワーク活動の増加に伴い、base feeの上昇とそれに連動したETHバーンが活発化し、実質的なデフレ圧力がETHの価値支持要因として機能している。
特にPectraアップデート後は、ネットワーク効率の改善により適度なネットワーク利用が促進され、バーン率とステーキングリワードのバランスが最適化されている。この結果、ETHホルダーにとってステーキング参加のインセンティブが維持される一方、投機的な過度なネットワーク利用は抑制される健全な環境が形成されている。
市場価格とオンチェーン指標の相関
ETH価格は2025年上半期を通じて、技術的進歩と市場需要の両面からサポートされた堅調な推移を示した。特にPectraアップデート実施前後の期間では、アップデートへの期待と実際の機能改善効果により、価格上昇が観測された。
オンチェーンデータでは、アクティブアドレス数の増加、トランザクション手数料の安定化、DeFi活動の活発化など、ネットワークの健全性を示す指標が軒並み改善している。これらの指標は、ETHが単なる投機対象ではなく、実用性に基づいた価値を持つデジタル資産として成熟していることを示している。
まとめと展望
H1 2025で確認されたEthereumの競争優位性
2025年上半期を通じて、Ethereumはブロックチェーン業界における確固たる地位を再確認した。Pectraアップデートによる技術的基盤の強化は、スケーラビリティ、セキュリティ、使いやすさの全ての面で大きな進歩をもたらし、他のブロックチェーンプラットフォームとの差別化を明確にした。
特に重要なのは、アカウント抽象化とステーキング機能の改善により、Ethereumが企業レベルでの採用に向けた準備を整えた点である。これにより、従来技術的な複雑さが障壁となっていた大手企業や機関投資家の参入が期待される。
2025年後半に向けた注目テーマ
2025年後半に向けて、Ethereumエコシステムでは以下のテーマが投資家にとって重要な監視ポイントとなる。
まず、Pectraアップデートの効果の本格化である。アップデートの恩恵が全てのdAppやユーザーに行き渡るには数か月を要するため、下半期にかけてその真価が問われることになる。特にアカウント抽象化の普及速度とそれに伴うユーザー体験の向上度合いは、Ethereumの長期的な競争力を左右する重要な要素となる。
次に、L2エコシステムのさらなる発展である。Pectraにより強化されたL1とL2の連携機能を活用した新しいdAppやサービスの登場が期待される。特に、クロスチェーン機能やインターオペラビリティの向上により、より複雑で高度な金融商品やサービスが実現される可能性が高い。
また、規制環境の明確化も重要な要素である。多くの国でデジタル資産に関する規制整備が進む中、Ethereumのような確立されたプラットフォームへの制度的な認知と採用が進むことが予想される。
投資家が注視すべきリスクと機会
投資家にとって、Ethereumは技術的な優位性と市場の成熟度から見て魅力的な投資対象である一方、以下の点に注意が必要である。
競合チェーンとの競争激化は継続的なリスク要因である。Solana、Cardano、その他の新興チェーンが独自の技術的優位性を打ち出している中、Ethereumが常に技術革新を続けることが重要となる。
一方で、機会という観点では、Pectraアップデートにより実現された技術基盤は、次世代の分散型アプリケーションや金融サービスの基礎となる可能性を秘めている。特に、アカウント抽象化により可能となったユーザー体験の改善は、これまでブロックチェーン技術に距離を置いていた一般ユーザーの大規模な流入を促す可能性がある。
最終的に、Ethereum 2025年上半期は、技術的成熟度と市場での実用性が融合した、新たな成長段階への移行期として位置づけられる。投資家にとっては、短期的な価格変動よりも、長期的なエコシステムの発展と実用性の拡大に注目することが、より大きなリターンにつながる戦略となるだろう。
免責事項
本レポートは情報提供のみを目的としており、投資助言や金融商品の勧誘を意図するものではありません。暗号資産への投資は高いリスクを伴い、投資元本を大きく下回る可能性があります。投資判断は必ずご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。
出典・参考情報
本レポートは公開されている情報源とオンチェーンデータを基に作成されています。市場データや技術情報は執筆時点のものであり、その後変更されている可能性があります。最新の情報については、各公式チャネルやドキュメントをご確認ください。
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