はじめに
前回まではBybitやMEXCといった中央集権型取引所(CEX)を通じたUSDT運用を紹介しました。CEXは使いやすさや手軽さが魅力ですが、暗号資産の世界には「自分の資産を自分で管理する」というもう一つの流れがあります。それがノンカストディアルウォレット(Web3ウォレット)を利用したDEX(分散型取引所)での運用です。ここでは、私も普段利用している PancakeSwap を例に、仕組みやメリット・デメリットを解説します。

ノンカストディアルウォレットとは?
CEXの口座に預けた資産は、取引所の管理下に置かれています。パスワードを忘れても再発行でき、セキュリティ体制も整っている一方で、GOX(取引所が破綻・不正で資産が失われるリスク)という懸念は常に残ります。
一方、ノンカストディアルウォレットは、資産の秘密鍵をユーザー自身が管理する仕組みです。代表的なものに MetaMask や Rabby Wallet などがあります。秘密鍵やリカバリーフレーズを正しく保管しておけば、特定の取引所に依存せず、自分のウォレットで資産を守れます。逆に言えば、これを失うと誰も助けてくれないため、自己管理の責任が極めて大きいのも特徴です。スクがあります。
DEX(分散型取引所)とは?
DEX(分散型取引所)は、中央管理者を介さずにユーザー同士が直接暗号資産を交換できる仕組みを持つ取引所です。CEXが銀行や証券会社のように仲介業者の役割を果たすのに対し、DEXはスマートコントラクトによってすべての取引が自動的に実行されます。
DEXの特徴としては以下の点が挙げられます。
- 自己管理型:資産はユーザーのウォレットに留まり、取引所に預ける必要がありません。
- 24時間稼働:中央の管理者がいないため、メンテナンス停止などがなく、常に利用できます。
- 透明性:取引や流動性の状況はすべてブロックチェーン上に公開されます。
一方で、使い勝手はCEXほど直感的ではなく、ガス代や操作ミスによるリスクがある点には注意が必要です。
PancakeSwapとは?
PancakeSwapは、BNBチェーン(旧バイナンススマートチェーン)上で動作する分散型取引所(DEX)です。2020年9月にサービスを開始し、AMM(自動マーケットメーカー)を採用してユーザー同士が直接トークンを交換できるプラットフォームを提供しています。

USDTの運用方法
1. 流動性提供(Liquidity Providing)
USDTと別の暗号資産(例:BNB)を同じ価値分ずつプールに預けることで、取引の流動性をサポートし、見返りとして取引手数料の一部を受け取れます。
- 例えば「USDT/WBNB」プールに流動性を提供すると、プール内で発生するスワップ手数料の一部が報酬となります。
- PancakeSwap V3では、価格レンジを指定して流動性を集中させる「集中流動性」の仕組みがあり、より効率的に報酬を得ることも可能です。
ただし、組み合わせた通貨の価格変動によってインパーマネントロスが発生する可能性があります。
例として、人気ペアには以下のようなものがあります。APRは2025年9月29日のもの。
- USDT/WBNB:最大43.03%のAPR

- ASTER/USDT:最大265.94%のAPR

2. ファーミング(Yield Farming)
流動性提供によって得たLPトークンを「ファーム」に預けることで、追加の報酬(主にCAKEトークン)を獲得できる仕組みです。流れはシンプルで、流動性提供をすると得られるLPトークンを預けるだけです。
- USDTとBNBなどをプールに預け、LPトークンを受け取る
- LPトークンをファームにステーキングする
- 報酬としてCAKEトークンを獲得する
この仕組みにより、ユーザーは「取引手数料 + CAKE報酬」の二重のリターンを得られます。
PancakeSwapにとっては、ユーザーが流動性を積極的に提供してくれるため、プラットフォームの利便性が高まり、エコシステムの成長につながるというメリットがあります。
ただし、価格変動によるインパーマネントロス、CAKEトークン自体の価格リスク、スマートコントラクトの脆弱性リスクには注意が必要です。
始めるための手順
ステップ1: 準備
- 国内取引所(BITPOINT)で口座を開設し、ガス代として必要なBNBを購入
- MetaMaskなどのウォレットを設定
ステップ2: PancakeSwapへの接続
- PancakeSwap公式サイトにアクセス
- 画面右上の 「Connect Wallet」 をクリック
- MetaMaskを選び、接続を承認
ステップ3: 流動性提供
- 画面上部のメニューから 「Trade」 → 「Liquidity」 をクリック
- 「+ Add Liquidity」 を選択
- ペアを組むトークン(例:USDTとBNB)を選び、同価値分を入力
- 「Enable」 → 「Supply」 → 「Confirm Supply」 をクリック
👉 この操作により、あなたのウォレットに LPトークン が発行されます。
ステップ4: ファーミング
- 上部メニューから 「Earn」 → 「Farms」 をクリック
- 一覧から対象ペア(例:USDT-BNB Farm)を探す
- 右端の 「Enable」 をクリック
- 有効化が完了したら 「Stake LP」 を押し、数量を入力
- 「Confirm」 をクリックしてステーキング完了
これでLPトークンがファームに預けられ、報酬(CAKEトークン)が獲得可能になります。収穫したい時は 「Harvest」 ボタンを押すだけでOKです。
リスクと注意点
- インパーマネントロス
USDTと組み合わせた通貨の価格が大きく動くと、単純保有より資産価値が減る可能性があります。
→ リスクを減らすには「USDT/USDC」などステーブルコイン同士のペアがおすすめです。 - スマートコントラクトリスク:コードに脆弱性がある場合、資産が失われる恐れがあります。
- 流動性リスク:プールに十分な流動性がないと、希望通りの取引ができないことがあります。
- 規制リスク:今後の法規制によってサービス内容が制限される可能性があります。
まとめ
PancakeSwapは、USDTを運用するうえで高い自由度と潜在的なリターンを提供するDEXです。インパーマネントロスやスマートコントラクトリスクといった注意点はあるものの、ステーブルコインペアから始めれば比較的低リスクで体験できます。
常に最新の利回りを確認しつつ、自分のリスク許容度に応じて戦略を調整することが、長期的に安定した運用につながります。
DYOR!!