ネットワークの“本当の分散性”を測る指標:ナカモト係数とは?

ナカモト係数(Nakamoto Coefficient)とは、ブロックチェーンネットワークの検証や運営を支配できる最小の主体数を示す指標です。この数値が大きいほど、ネットワークはより広く分散されており、少数のバリデーターやマイナーによる支配が困難になります。

一方、ナカモト係数が小さい場合、ネットワークは一部のステーキングプールやマイナーに依存しており、検閲や操作のリスクが高くなる可能性があります。

各ブロックチェーンのナカモト係数は下記サイトを参考にしています。

目次

ナカモト係数って何?

仮想通貨やブロックチェーンを始めたばかりの方にとって、「ナカモト係数」は少し難しい言葉かもしれません。でも、実はとってもシンプルなのです!
ナカモト係数は、ブロックチェーンがどれくらい「みんなで管理されているか」を示す数値になります。ブロックチェーンは、銀行や政府のようなボスがいない「分散型」のシステムですが、時には少数の人が大きな力を持ってしまうことがあります。それをチェックするのがナカモト係数です。

この指標は、ビットコインの生みの親「サトシ・ナカモト」にちなんで名付けられました。簡単に言うと、ネットワークをコントロールするために必要な「最小のグループの数」を表します。たとえば、ビットコインを動かす「マイニング」の力や、イーサリアムの「ステーキング」の力を調べます。

算出方法は!?

ナカモト係数は、ブロックチェーンの「力」の51%以上を握るのに、どれだけのグループ(人や会社)が必要かを数えます。このグループのことをエンティティと呼ばれます。難しい。。

たとえば、

  • ビットコインの場合:マイニングをする「マイニングプール」がどれくらいの力を持っているかを見ます。3つのプールで51%以上の力を握れるなら、ナカモト係数は「3」。
  • イーサリアムの場合:トークンを預けてネットワークを支える「ステーキング」のグループをチェック。2〜4つのグループで51%を握れるなら、ナカモト係数は「2〜4」。

ポイントをまとめると、次のようになります。

  • 数字が大きい → たくさんのグループが必要 → ネットワークは「分散」されていて安全
  • 数字が小さい → 少数のグループでコントロール可能 → 注意が必要

なぜ大事なのか。

ナカモト係数は、ブロックチェーンの「分散度」を測る指標で、ネットワークをコントロールするために必要な最小のエンティティ(人や組織)の数を表します。この数字が大きいほど、ネットワークは多くの人に支えられていて「分散型」で安全、小さいと少数の人に支配されるリスクがあります。なぜ重要なのか、4つの観点から詳しく見ていきましょう!

1. セキュリティ:ネットワークを守るための鍵

ナカモト係数が低いと、ブロックチェーンが「51%攻撃」と呼ばれるハッキングのリスクにさらされます。これは、ネットワークの力(例:ビットコインのマイニングパワーやイーサリアムのステーキング量)の51%以上を少数のグループが握ってしまう状況です。攻撃者は以下のような悪事を働く可能性があります。

  • 取引の改ざん:過去の取引を書き換えて、仮想通貨を盗んだり、二重支払い(同じコインを2回使う)したりできます。
  • ネットワークの停止:新しい取引の承認を妨げ、ネットワークを麻痺させることが可能。

例として有名なのが、Ethereum Classic(ETC)に対する複数回の攻撃です。2020年8月に同月で3度も攻撃されるという出来事がありました。Ethereum Classicのナカモト係数はKaggleの調査によると2でした。

2. 信頼性:みんなで支えるネットワークの強さ

ブロックチェーンの最大の魅力は、銀行や政府のような「中央管理者」を必要とせず、みんなで管理できることです。ナカモト係数は、この「みんなで管理」の度合いを示します。係数が低いと、少数の大手にネットワークが牛耳られてしまい、「分散型」の理念が崩れるリスクがあります。

イーサリアムのステーキング割合について、Duneで調べてみたデータがあるので、ご覧ください。(2025.06.22)

https://dune.com/queries/5326976/8731765

イーサリアムのステーキングでは、Lidoというプラットフォームが25.7%のステーキングシェアを持っています。LidoはDAOで運営されているのですが、かなりの比率です。
企業であるBinanceとCoinbaseの2つの取引所が合計14.8%の比率です。他にも上記データにある企業が結託した場合、ナカモト係数は低下、ネットワーク支配のリスクは高まります。

3. ガバナンス:誰がルールを決めるか

ブロックチェーンではルール変更やアップグレードをどう決めるかが重要です。ナカモト係数が低いと、少数の勢力が意思決定を支配する構造になりかねません。

コーネル大学の研究論文で興味深いものがあったので紹介します。(Cornel University:arXiv:2305.17655

UniswapとCompoundの2つのガバナンスプロトコルを分析し、上位10人の投票者がUniswapでは約44.72%、Compoundでは約57.86%の投票権を保有していました。さらに、Compoundの投票においては平均して89.39%の賛成票が集まる一方で、わずか3人未満の投票者で過半数(50%以上)を形成可能であることも判明。これは一見分散されているように見えるプロトコルであっても、実質的には極めて限定された少数の支配下にあることを意味しています。

また、ガバナンス参加にかかるコストの負担が小口保有者には不公平であることや、投票コアリション(結託グループ)の存在も確認され、小規模参加者の声が届きにくい構造的課題が浮き彫りとなっています。

まとめ

ナカモト係数は、ブロックチェーンの「安全度」や「みんなで管理されている度」を知るためのカギです。初心者でも「数字が大きい=安全」と覚えておけば、仮想通貨の世界がもっとわかりやすくなります!投資や参加するプロジェクトを選ぶ前に、ナカモト係数をチェックして、安心できるネットワークを見つけましょう。

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