1. TVLとは何か?
TVL(Total Value Locked)とは、日本語で「総ロック資産」とも訳される指標で、特定のブロックチェーンやDeFiプロトコルにロックされている暗号資産の総額を表す値です。
TVLが高いということは、それだけ多くの資産がそのチェーンやプロトコル上に預けられ、経済活動が活発であることを意味します。主にDeFi(分散型金融)分野での利用が中心で、流動性プール、貸付プラットフォーム、ステーキングなどで預けられた資産の価値を合算して算出されます。
TVLはそのチェーンの信頼性、人気、利便性を示す重要な指標として、投資家や開発者の注目されている指標です。
2. USDベースとネイティブトークンベースのTVL
TVLの計測は主に2つの方法があります。
USDベースのTVL
これは、ロックされている資産の価値をアメリカドルで換算したものです。
例えば、2025年6月13日のハイリキ(Hyperliquid)が1HYPE = $42でした。
ハイリキのチェーンにロックされているHYPEが43Mだった場合、TVLは次のように計算されます。
43M HYPE ✖︎ $42 = $1.8B
こうすることで、単位がドルに揃い、他のチェーンとの比較が可能となります。
ハイリキのTVL(USD)のチャートを示しておきますね。

ネイティブトークンベースのTVL
こちらは、そのチェーンのネイティブトークン単位(ETH、SOL、SUIなど)でロックされている量を示します。
単位をドルに揃えないため、他のチェーンとの直接比較は難しいです。しかし、実際の資産量の変化を把握しやすいというメリットがあります。
こちらも、ハイリキのHYPEのTVLを示すチャートを示しておきますのでご覧ください。

3. TVLをどう分析するか?
TVLを活用した分析では、以下のような視点が有効です。
価格変動の影響を取り除く
たとえば、USDベースのTVLが増加している場合、それが資産の新規流入によるものか、単にトークン価格が上昇した結果なのかを見極める必要があります。ネイティブトークンベースのTVLと比較することで、真の資金流入があったかがわかります。
Market Cap to TVL(MC/TVL)比率
これは、そのチェーンの時価総額とTVLの比率です。
- 1に近いほど、市場評価とロック資産量がバランスしている
- 1を大きく超える場合、時価総額に対して資産が少なく、過大評価の可能性も
TVLとアクティブユーザー数の比較
資産が多くロックされていても、実際に使われているユーザーが少なければ死んだTVLとも言えます。アクティブアドレス数やトランザクション数も併せてチェックすると、より実態がわかります。
4. 具体例:SuiとHyperliquid
2025年6月13日時点で、DeFiLlamaを用いてTVLを比較すると、以下のような違いが見られます。

- Sui
- TVL(USDベース):約17.96億ドル
- 比較的早期からTVLを積み上げており、安定した成長を示している
- 分散型取引所やレンディングなど複数分野でのエコシステム展開が進む
- Hyperliquid
- TVL(USDベース):約18.31億ドル
- 急速にTVLが伸びており、2025年に入ってからSuiを追い抜く勢いを見せている
- 主にデリバティブ取引に強みを持つが、その成長スピードは注目に値する
TVLの時系列推移を見ても、Suiは比較的なだらかな上昇を続けているのに対し、Hyperliquidは短期間で急激な伸びを示しています。これにより、チェーンごとの資本吸引力や成長戦略の違いが浮き彫りになります。
5. TVLの限界と補完指標
TVLはあくまで「預けられている資産の量」を示すにすぎません。そのため以下のような限界があります。
- ロックされているだけで使われていない資産も含まれる
- 高TVLだからといって収益性が高いとは限らない
そこで、以下のような指標も併用しましょう!
- アクティブアドレス数:実際にそのチェーンを使っているユーザー数
- 取引量:資産がどれだけ活発に動いているか
- 手数料収入:実需によるネットワーク収益の指標
TVLはDeFiやブロックチェーンプロジェクトを評価する上で欠かせない指標です。USDとネイティブトークンの両面から見ることで、より立体的な理解が可能になります。初心者の方も、この記事を通じて、TVLを使った基本的な分析ができるようになることを目指しています。