第3回:Blockdaemonを深掘り:最大級ノード運用企業

前回のおさらいと、今回のテーマ

前回の記事では、ヨーロッパを代表するステーキング企業「Kiln(キルン)」について紹介しました。多くのCEX(中央集権型取引所)が自社でバリデーター(ネットワークの検証者)を運営せず、信頼できる外部企業に委託しているという実態をお伝えしましたね。

今回は、アメリカを拠点に世界最大級の規模を誇るノード運用企業「Blockdaemonブロックデーモン)」にスポットを当てていきます。

目次

Blockdaemonとは?

Blockdaemonブロックデーモン)は、2017年にアメリカ・ニューヨークで設立された、世界有数のステーキングインフラ提供企業です。CEOはKonstantin Richter氏。世界中で18万台以上のノード(ブロックチェーンの運用装置)を管理し、110億ドル以上の暗号資産を安全に支えています。

仮想通貨のステーキングとは、トークンをネットワークに預けてその運営に参加し、報酬を得る仕組み。そのネットワークの安定運営を支える存在が「ノード」と呼ばれるサーバーです。Blockdaemonは、このノードを大量かつ安定して運用することで、CEXや金融機関の裏側でステーキング業務を支えています。

  • 設立:2017年
  • 拠点:アメリカ・ニューヨーク(北米・欧州・アジアに拠点あり)
  • 対応チェーン:60以上
  • 利用企業:Coinbase、Fireblocks など

企業名の”daemon(デーモン)”とは、コンピュータの世界では「裏で働く見えない存在」という意味。Blockdaemonはまさに、その名の通り、仮想通貨業界の裏方の主役です。ミッションは、ブロックチェーンの導入・活用をもっと簡単に、安全にすること。つまり、企業やサービスが自前で複雑なブロックチェーン技術を理解・管理しなくても、Blockdaemonの力を借りればスムーズに活用できる、そんな存在です。

対応チェーンと主なサービス

Blockdaemonは、以下のようなメジャーなPoS(Proof of Stake)チェーンに対応しています。

  • Ethereum(イーサリアム)
  • Solana(ソラナ)
  • Polkadot(ポルカドット)
  • Cosmos(コスモス)
  • Tezos(テゾス) など

これにより、CEXやウォレットサービスは、Blockdaemonのインフラを活用して簡単にステーキングサービスを提供できるのです。なお、顧客は機関投資家や暗号資産取引所などの企業で、個人向けサービスは提供していません。

主なサービス内容は次のとおりです。

サービス名内容
フルノード運用チェーンごとの専用ノードを構築・保守
バリデーター委託ステーキングの実行代行
API・ダッシュボードステーキング状況の可視化ツール
カストディ連携FireblocksやLedgerとの統合

万が一に備える体制「フェイルオーバー」とは?

ステーキングにおいて重要なのは、止まらないこと。ノードが停止してしまうと、ネットワークに貢献できなくなり、報酬が減るだけでなく、ペナルティ(スラッシング)が発生することもあります。

Blockdaemonではこのリスクに備え、フェイルオーバー体制を整えています。

フェイルオーバーとは?

ノードに問題が起きたとき、すぐに別の予備ノードに自動的に切り替える仕組み。これによりサービスを止めず、安定性を保てます。

さらに、24時間365日のモニタリング体制で、万が一の障害にも迅速に対応。銀行レベルの信頼性が求められるCEXにとっては、非常に重要なポイントです。

スラッシングって何?Blockdaemonの対応策

スラッシング(Slashing)とは?

ステーキング中にノードが長期間オフラインになったり、不正な行為をした場合、ネットワークから罰金として預けたトークンの一部が没収される仕組みのことです。

Blockdaemonでは、このスラッシングを防ぐために次のような対策を講じています。

  • ノードの多重バックアップ(冗長構成)
  • 地理的に分散したサーバー展開
  • スラッシュが発生しやすいチェーンごとのリスク監視
  • 自動復旧と即時切り替え機能

このような“守りの強さ”が、Blockdaemonが機関投資家やCEXから選ばれている理由の一つです。

Blockdaemonの特徴

Blockdaemonは、ただノードを運用するだけではありません。以下のような強みがあります。

ISO 27001認証を取得

国際的な情報セキュリティ規格「ISO 27001」の認証を取得しており、情報管理体制の信頼性が極めて高いです。Web3企業は、ブロックチェーンや暗号資産を扱うため、セキュリティが非常に重要です。以下のような理由でISO 27001が役立ちます。

  • 顧客資産の保護:暗号資産やウォレットのデータは高価値で、ハッカーの標的になりやすい。ISO 27001は、これを安全に管理する仕組みを提供。
  • 信頼性の証明:BlockdaemonがISO 27001認証を持つことで、CoinbaseやJP Morganのような大手企業が安心してサービスを利用できる。
  • 規制対応:金融機関や暗号資産企業は、厳しい規制(例: KYCやAML)に対応する必要があり、ISO 27001はこれをサポート。

マルチチェーン対応とスケーラビリティ

複数のブロックチェーンを一括して管理・運用できるため、多様なニーズに柔軟に応えることができます。さらに、負荷が高くなっても自動で対応できるスケーラブルなインフラが整っています。

グローバルな展開

世界70以上の拠点にノードを展開しており、地理的に分散された構成が可能。これにより低遅延かつ高可用性のネットワークを実現しています。

まとめ

Blockdaemonは、Web3業界でブロックチェーンのノード管理、ステーキング、API、ウォレット管理を提供する企業で、機関投資家や開発者向けに特化しています。60以上のブロックチェーンに対応し、ISO 27001認証やスラッシング保険で高い信頼性を誇ります。Kilnと比較すると、Blockdaemonはマルチチェーン対応とAPIのスケーラビリティで優れ、Kilnはイーサリアムのステーキングに特化しています。どちらもWeb3の成長を支える重要な企業ですが、Blockdaemonはより幅広いニーズに応えるインフラを提供しています。

もしBlockdaemonやKiln、他のWeb3企業についてさらに詳しく知りたい場合や、特定のサービス(例: ノードの設定方法、ステーキングの詳細)に焦点を当てたい場合は、ぜひ教えてください!

次回予告:Figment──カナダ発、研究志向のステーキング企業

次回は、学術的なアプローチと信頼性で知られるカナダのバリデーター企業「Figment」について取り上げます。多くの情報発信や技術貢献を行っている、業界でも注目の存在です。どうぞお楽しみに!

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